富士の麓、竹林を抜けた先に佇む和の理想郷——なぜ2026年、人々は御殿場「とらや工房」を目指すのか
とらや 工房は、静岡県御殿場市の雄大な自然に抱かれた緑豊かな敷地の中で、訪れる者の心を解きほぐす特別な時間を刻んでいる。標高が高く澄み切った空気が漂う富士山麓。その鬱蒼とした竹林を抜けると、ふっと心地よい静寂が広がっていた。室町時代後期創業の老舗和菓子店「とらや」が2007年にオープンしたこの施設は、和菓子の原点を再発見する場として立ち上げられて以来、2026年の今日に至るまで国内外の熱烈なファンを惹きつけ続けている。
デジタルに追われる現代社会において、多くの人が求めるのは「その場所でしか味わえない本物の体験」だ。御殿場エリアの観光シーンを力強く牽引するとらや 工房は、まさにその欲求に完璧な答えを提示してくれる。木漏れ人が差し込むオープンエアの回廊席に腰掛け、職人が丁寧に仕上げた出来立ての甘味を頬張る。これ以上の贅沢があるだろうか。
緑豊かな敷地と内藤廣氏の手がけた木造建築の美学

敷地内に一歩足を踏み入れると、そこは日常のスピードとは異なる時が流れる別世界だ。かつてこの地にあった元首相・岸信介の邸宅(東山旧岸邸)に隣接し、歴史と自然が深く溶け合っている。
建物の設計を担当したのは、日本を代表する建築家・内藤廣氏。緩やかな曲線を描く木造の回廊は、庭園の樹木を傷つけないよう配慮して配置された。屋根の下に広がる半屋外のテラス席からは、四季折々に表情を変える池や竹林が一望できる。雨の日には庇を打つ雨音すらも、風情ある演出に変わる。自然を切り取るのではなく、自然の中に溶け込ませるという意匠が、訪れる者の感覚を研ぎ澄ませていく。
ガラス越しに伝わる臨場感!職人の手仕事と出来立ての贅沢

ここでは、和菓子が「作られるプロセス」そのものが最高のごちそうだ。カフェスペースに併設されたガラス張りのかまど工房では、職人たちが真剣な眼差しで作業に当たっている。
熱々の鉄板で手際よく焼き上げられる「どら焼き」。せいろから白い湯気を立ち上らせる「赤飯」や季節のまんじゅう。網の上で香ばしく炙られる餅の香り。出来立てをその場ですぐに味わう——これこそが、通常の店舗では絶対に味わえない体験だ。特に香ばしい皮とみずみずしい餡が引き立ちあうどら焼きは、一口食べればこれまでの概念が覆るほどの鮮烈な印象を残す。
旬の味覚を映す季節の限定甘味と厳選された地元素材

メニューの根底にあるのは、「和菓子の原点」への回帰だ。飾らないシンプルさの中に、最上の素材と技術が凝縮されている。
春には桜餅やよもぎ餅、夏には冷やしぜんざいや涼やかな葛餅、秋には栗の風味豊かな生菓子、冬には心まで温まるお汁粉。四季の移ろいがそのままお品書きに反映される。また、使用される水や地元の農産物など、御殿場の豊かな風土が育んだ食材もふんだんに取り入れられている。添えられる煎茶やほうじ茶も、餡の甘さを計算し尽くした絶妙なブレンド。お代わり自由の温かいお茶を片手に、ゆったりと過ごす時間は何物にも代えがたい。
2026年、なぜ世界から「スロー・トラベル」の目的地として選ばれるのか
2026年の旅行トレンドにおいて、特に注目を集めているのが「スロー・トラベル」や「ウェルビーイングな休日」という概念だ。有名観光地を駆け足で巡るスタイルから、特定の場所で上質な時間を過ごす滞在型観光へとシフトしている。
こうした潮流の中で、評価をさらに高めているのがこの場所だ。過剰なデジタル演出や派手な映え狙いとは対極にある、本物の自然と伝統工芸的ものづくり。欧米を中心とするインバウンド客にとっても、「日本の精神性と静寂を体験できる場所」として口コミが広がり、御殿場プレミアム・アウトレットの買い物ついでにとどまらない、旅の主目的として選ばれている。
隣接する「東山旧岸邸」とともに巡る歴史と文化の散策
工房で甘味を堪能した後は、隣接する歴史的建造物へ足を伸ばすのが王道の散策コースだ。
1969年に建てられた「東山旧岸邸」は、建築家・吉田五十八氏が手がけた数少ない個人邸宅の遺構だ。伝統的な数寄屋建築の美と、近代的な居住性が融合した空間は一見の価値がある。旧岸邸の庭園と散策路でつながっており、和菓子を楽しんだ後にじっくりと歴史的建築と手入れの行き届いた庭園を観賞できる。単なる飲食体験に留まらず、カルチャーと歴史を深く学ぶ一日が完結する。
混雑を避けて至福の時間を過ごすための訪問アドバイス
週末や観光シーズンには多くの人が訪れるため、快適に過ごすためには事前の計画が欠かせない。
狙い目は開店直後の午前中だ。清々しい朝の空気の中でいただく出来立ての和菓子は格別で、混雑も比較的少ない。また、売店で販売されているお持ち帰り用の生菓子や焼き菓子は、夕方には品切れになることも多いため、到着後早めに確保しておくことをお勧めする。公共交通機関を利用する場合は、JR御殿場駅からバスやタクシーでアクセス可能。車の場合は都心から東名高速道路を経由して約1時間半と、日帰りドライブにも絶好のロケーションだ。 (出典: とらや 工房(Yahoo!ニュース))